暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》
側近メイドである事は私の誇り……。
とは言え、流石にそのような事を皆の前で言うわけにはいかない。
そもそも陛下は私がメイドである事は知らないし、国同士の重要パーティーでそのような発言をすれば陛下の評判に傷がつくかもしれない。
相手は特に身分を重視する人だから、もしそのような事を言えばどうなるか。
考えなくても分かる。
「ふふふっ、別に無理して答えなくても良いのよぉ〜?貴女とわたくしとでは格が違う。身の程を弁えなさいと言ったのはそうゆう事よ!」
……どうにかしてこの場から抜け出したいけど、騒ぎによって周囲の人達が集まってきたせいで下手に行動ができない。
「王女様ほど優れている女性は他にはいませんわ〜!」
「流石は王女様!!」
何かいい策はないか頭を悩ませていると、丁度よい物が私の目に入ってきた。
「…王女様がお持ちのそのグラス、とても素敵ですね」
他の人が手に持っているグラスとは明らかに違う、まるで見せびらかす事を目的としたような目の引くグラス。
「身分が低くても、このグラスの美しさは分かるのね」
王女様は気分良さそうに、グラスを掲げて見せた。
シャンデリアの光に照らされたそのグラスを見て、私は確信した。
「えぇ、他とは違いますもの」
「ふふっ。これは高位貴族ですら入手が困難だと言われている貴重な代物なのよ!お父様にお願いしたらプレゼントして下さってぇ〜」
繊細な金細工と透明度の高いグラスで有名な職人。
「マテオ・マテラですか?」
「あら意外・・・・知っているのね?まぁ、いくら下級貴族でも知っていて当然かしら」
王女様がいった通り、マテオ・マテラのグラスはいくら貴族であっても入手が難しい。
それほど高級な品物だということもあるが、マテオ・マテラのグラスは人を限定して売られている事も関係している。
高いプライドと、強いこだわり。
マテオ・マテラは自身が認めた人以外は売らないと聞いた事がある。
そして、その噂は実際に当たっている。