暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》


正直助けられたところで、俺はこの先どう生きていけばいいのか。

皇城に戻って助けを求める?

―――…いや、皇城へ戻って助けを求めたところで一体どうなる。


皇帝である父は女と酒に溺れ、もはや俺の声など届かないだろうし。

刺客を放った誰かは皇子宮で起きた悲惨な出来事を、全て俺のせいにするつもりかもしれない。

……というか、恐らくそうするはずだ。

皇子宮は血の海で、本人は失踪している。

真実を知るものが誰もいない中、俺を殺したいと思っている奴等が俺の行方を探す方法。

俺を悪者にすれば帝国内に指名手配され、奴等は自ら探さなくとも騎士や地方の兵士等が勝手に探してくれる。


「………」


やはり俺は、あの時死ぬべきだったか。

皇后の息子として生まれ次期皇帝として育てられはしたが、特別皇帝になりたいと思ったことは無かった。

ただその座にいたから仕事を行っていただけで、他の兄弟たちが皇帝になりたいと言うのなら別にそれでもいいと本当は思っていた。

俺は穏やかに暮らせればそれで良いと―――…。


「……安易な気持ちで死を選ぶのではない」

「え?」


まるで心の中を見透かされたような男の発言に、思わず唖然となる。


「確かに今は辛かろう。だが、思い出せ。お主は何の為に逃げてきた?お主の為に犠牲になった者も中にはいたじゃろう。その者達はお主に一体何を望んだ?」


俺が逃げてきた理由。

俺の為に犠牲になった者達…。


『どうか、皇子様は生きて下さい!!この国を変える為にも』


「…っ!」


そうか。

そうゆう事だったのか…。


自分の命をかけてまで、逃げるように必死に説得した使用人が俺に望んでいたもの。


「俺ならこの腐敗しきった帝国を変えれると思ったからか…」


実際にそんな力があるかどうかはさておき、幼い頃から放蕩した父と嫉妬に狂った母を見て、帝国に対する呆れや憎しみを募らせていた俺だからこそ。

他の皇子達とは違って、その座に固執しない俺だからこそ。

俺を選んだのかもしれない。


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