暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》
「さてと、答えが出たところでお主に一つ提案じゃ。応急処置をしたとは言え、ちゃんとした治療は受けた方が良い。……と言う事で、取りあえず我が国に来る気はないか?」
「は?」
確かにこのまま帝国に居続ける事は、常に身を危険に晒している事と一緒だ。
指名手配されてしまえばまず自由行動は出来ないし、そうなると隠れながらの生活になるが、それだといつかは限界がくる。
一番良いのは帝国の干渉を受けない他国へ亡命する事だが―――…
「目的は何だ?」
「ほぅ…?」
「俺の境遇を知っているかのような発言をしておいて、今更誤魔化せるとでも思っているのか?始めから俺を誰だか知っていて助けたのだろう」
刺客を軽々倒した辺りから普通の男ではないと思っていた。
俺の境遇を知っていた事と言い、亡命の提案をしてきた事と言い。
ただの善意から助けたとは思えない。
きっと、何か他の目的があるに決まっている。
「…ふっ、頭の回転も早く実に興味深い若造よ。確かに余はお主が誰だか知っていて助けた。じゃが、それはお主が帝国の中で唯一まとも人間だと思ったからじゃ。腐臭漂う皇室の中で常に冷静に物事を把握し、自身の立場をよく理解しておるように見えたから。
……本当は帝国を攻め落とす予定で偵察に来ておったが、まさかあの様な場面に遭遇するとは、予想外じゃったわい!」
「つまり、俺に何を望んでいる?」
「ふっ…。つまり率直に言うとお主――――――――……皇帝になれ」
「…っ!?」