暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》
あの日については何も公言していないというのに、よくぞまぁ……ここまで考えついたものだ。
聞くところによれば、パーティーに参加していない国までも噂しているそうではないか。
「…もういっその事、妃にするのはどうだ?」
「お前はまたその話か」
「別に本当の妃にする必要は無い。表向きの説明として、一時的にどうかと言っているんだ」
一時的に…か。
これまで一度も考えた事のない発想だ。
確かに仮の妃をつくる事で、今後何かしら役に立ち色々と便利ではありそうだが。
「そこまでする必要はあるのか?今までは表向きの説明など用意していなかったではないか」
「それは用意する必要が無かったからな。今回は他国の手を借りているだろう?」
つまり、帝国だけの問題では無いと言うことか。
確かに正当な理由があれば、他国からの反発は抑えられるだろうが───……。
権力を得てしまったが故に身を滅ぼしていった者たちを、俺はこの目で沢山見てきた。
嫉妬に駆られ罪を犯し、醜い姿になっていった者たちを。
まぁ、アニであれば大丈夫と思うが。
「一応、契約書は作成してくれ」
「と、言うと………?」
「アニを妃にする。仮…だがな」
「…っ!!」
思い返せば最初の頃、アニは身分を気にしていた。
妃にすれば、その様に気にする事もなくなるだろう。
「とは言え、皇帝になって初めて迎える妃だ。部屋はあそこを与えるとしよう」
きっとアニは驚くに違いない。
だが、そんな顔を見るのも案外悪くないのかもしれない。