暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》

***

昼過ぎ。

私は陛下に呼ばれ、執務室に来ていた。

重要な話でもあるのか人払いを済まされたその場には、陛下とファンさん、そして私…という、いかにも何か起きそうなメンバーが揃っていた。

「久しぶりだな。元気にしていたか?」

「はい…それはもう…。何不自由もなく過ごさせて頂いております」

陛下が向かい合っている机の上には沢山の書類が積まれていて、帝国へ戻ってからどんなに忙しかったのかが分かる。

それに比べて私は帝国へ戻ってからも特にする事がなく、庭園の散策や読書など、ゆったりとした時間を過ごしていて何だか申し訳ないぐらいだ。

「先日、我が国がヴィスタン王国を征服したという話は聞いているか?」

「…はい。帝国に戻ってからですが、他の者から聞きました」

それまで私はヴィスタン王国が滅ぼされた事を全く知らなかった。

周りはそんな素振りすら見せなかったし、サニー達はあまりにもいつも通りだったから。

帝国に戻り城内で流れる噂を知って、初めて知ったくらいだ。

「……私が王女様と問題事を起こしたばかりに、そうせざる得なかったのですよね…?」

ヴィスタン王国から出発する前、謝罪する私に向かって『処罰を与えるつもりはない』と陛下は仰られていたけど、本当は既にその時には国同士の問題に発展していて、私だけの処罰では収拾がつかない状況だったのかもしれない。

それで、ヴィスタン王国と戦争になって……結果的に征服した形となった。

きっと、そうに違いない。

ヴィスタン王国が滅んだのは、やはり、私のせいだ……。

「本当に…本当に申し訳ありませんでした…!」

謝って済む問題でない事は分かっている。

問題の無かった両国の関係を私が壊してしまったのだから。

「…その話はあの時に終わったはずだが、まぁ良い。顔をあげよ」

「……」

恐る恐る顔をあげると、真っすぐ向けられた陛下の目と合う。

「あの国が滅んだのはそなたのせいではない。絶好のタイミングだったから、そうしたのだ」

「そう…なのですか?」

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