暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》
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昼過ぎ。
私は陛下に呼ばれ、執務室に来ていた。
重要な話でもあるのか人払いを済まされたその場には、陛下とファンさん、そして私…という、いかにも何か起きそうなメンバーが揃っていた。
「久しぶりだな。元気にしていたか?」
「はい…それはもう…。何不自由もなく過ごさせて頂いております」
陛下が向かい合っている机の上には沢山の書類が積まれていて、帝国へ戻ってからどんなに忙しかったのかが分かる。
それに比べて私は帝国へ戻ってからも特にする事がなく、庭園の散策や読書など、ゆったりとした時間を過ごしていて何だか申し訳ないぐらいだ。
「先日、我が国がヴィスタン王国を征服したという話は聞いているか?」
「…はい。帝国に戻ってからですが、他の者から聞きました」
それまで私はヴィスタン王国が滅ぼされた事を全く知らなかった。
周りはそんな素振りすら見せなかったし、サニー達はあまりにもいつも通りだったから。
帝国に戻り城内で流れる噂を知って、初めて知ったくらいだ。
「……私が王女様と問題事を起こしたばかりに、そうせざる得なかったのですよね…?」
ヴィスタン王国から出発する前、謝罪する私に向かって『処罰を与えるつもりはない』と陛下は仰られていたけど、本当は既にその時には国同士の問題に発展していて、私だけの処罰では収拾がつかない状況だったのかもしれない。
それで、ヴィスタン王国と戦争になって……結果的に征服した形となった。
きっと、そうに違いない。
ヴィスタン王国が滅んだのは、やはり、私のせいだ……。
「本当に…本当に申し訳ありませんでした…!」
謝って済む問題でない事は分かっている。
問題の無かった両国の関係を私が壊してしまったのだから。
「…その話はあの時に終わったはずだが、まぁ良い。顔をあげよ」
「……」
恐る恐る顔をあげると、真っすぐ向けられた陛下の目と合う。
「あの国が滅んだのはそなたのせいではない。絶好のタイミングだったから、そうしたのだ」
「そう…なのですか?」