暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》
紅茶を口に含みながらそんな事を考えていると、ダリアが慌てた様子で駆け寄ってきた。
「どうかしたの?」
「陛下がお見えです!」
「え?」
陛下のいらっしゃる建物から、このサファイア宮は近い。
妃の元へ皇帝が通うのは当然の事で、何も可笑しくはないけど…私は仮の妃。
ただ会いに来た訳ではないのだろう。
「無事に移動が終わったようだな」
「はい。優秀なメイドのおかげで、無事に移動する事が出来ました。この住まいも、私には勿体無いぐらい素敵で、とても気に入りました」
「そうか。愛しい我が妃に喜んでもらえると、余も嬉しくなる」
陛下はそう言うと、私の髪の毛に触れる。
その表情はまるで愛しい何かを見るかのようで……
「あの…陛下?」
もしかして……。
妃として振る舞う契約に、これも含まれてるの!?
恋も知らない私が、愛し合っている振りなんか…出来るのかしら?
…いや、例え出来ないとしても、やらなくちゃ。
それが解放の条件というのなら。