暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》
「では、同じですね。私も陛下が喜んで下さると、とても嬉しい気持ちになりますの」
そう言って、穏やかに笑ってみせる。
きっと事情を何も知らない周りには、微笑ましい光景に見えている事だろう。
それで良い。
私は契約通り妃として振る舞い、そして皇帝に愛される妃を演じるだけだ。
「……」
「陛下?」
急に黙り込んだ陛下に、私は首を傾げる。
「いや、またここへ来る」
陛下はそう言うと、背を向けてサファイア宮から立ち去った。
一体、どうしたんだろう?
「アニ様は本当に愛されていらっしゃいますね」
「羨ましいです!」
愛されてる妃を演じきれたようで、アンナとダリアは興奮した様子で話しかけてきた。
「アニ様が妃となった事で、陛下は多数寄せられていた縁談を一気に断ったそうですよ!」
まさに陛下の狙っていた通りの反応だ。
ところで……
「リリアンは?」
「それが…まだ体調が良くないみたいでして…」
思えばヴィスタン王国に行ったときから、いつもの元気が無く、大人しかった気がする。
体調が悪いと、帝国に戻ってきてから休み続けているけど……
「ちょっと様子を見に行きましょう。リリアンの部屋は分かる?」
「はい。それは分かりますが…アニ様のようなお方がお越しになるような場所では…」
「私なら構わないわ」