暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》

「では、同じですね。私も陛下が喜んで下さると、とても嬉しい気持ちになりますの」

そう言って、穏やかに笑ってみせる。

きっと事情を何も知らない周りには、微笑ましい光景に見えている事だろう。

それで良い。

私は契約通り妃として振る舞い、そして皇帝に愛される妃を演じるだけだ。

「……」

「陛下?」

急に黙り込んだ陛下に、私は首を傾げる。

「いや、またここへ来る」

陛下はそう言うと、背を向けてサファイア宮から立ち去った。

一体、どうしたんだろう?

「アニ様は本当に愛されていらっしゃいますね」

「羨ましいです!」

愛されてる妃を演じきれたようで、アンナとダリアは興奮した様子で話しかけてきた。

「アニ様が妃となった事で、陛下は多数寄せられていた縁談を一気に断ったそうですよ!」

まさに陛下の狙っていた通りの反応だ。

ところで……

「リリアンは?」

「それが…まだ体調が良くないみたいでして…」

思えばヴィスタン王国に行ったときから、いつもの元気が無く、大人しかった気がする。

体調が悪いと、帝国に戻ってきてから休み続けているけど……

「ちょっと様子を見に行きましょう。リリアンの部屋は分かる?」

「はい。それは分かりますが…アニ様のようなお方がお越しになるような場所では…」

「私なら構わないわ」

< 141 / 178 >

この作品をシェア

pagetop