暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》

もしかするとお医者様も呼べずに、一人で我慢しているのかもしれない。

「…かしこまりました。それなら、ご案内致します」

「えぇ、お願い。サニー」


久しぶりに使用人用居室棟の廊下を歩く。

大体の者が仕事に出ている為、寮内はとても静かで、私達の足音だけが廊下に響いていた。

「ここでございます」

そう言ってサニーが足を止めたのは、ドアプレートに“四〇五”と書かれた部屋。

木製のドアをノックするが、中からの反応は無い。

「リリアン、私よ。アニよ」

もう一度、次は名前を呼びながらノックをすると、中から戸惑うような声が聞こえてきた。

「アニ…様?」

「えぇ。私よ、リリアン。心配で様子を見に来たの。その…体調は大丈夫?」

「…………」

その言葉に返事は無い。

「お医者様には診てもらったの?もしまだ診ていないのなら…」

私が治す事だって出来る。

もちろんその時は、サニー達を部屋の外に待機させた状態になるけど。

「私なら大丈夫です。お気遣いありがとうございます」

「…無理だけはしないでね。もし本当に無理だと思ったら私を呼んで。すぐ駆けつけるから」

リリアンが今、どんな状態なのか私には分からない。

もしかすると、外へ出れない程に重い症状なのかもしれない。

けど、無理して明るく振る舞っているようなリリアンの声を聞いた私には、他の何かを抱えているような気がして。

これ以上、踏み込む事など出来なかった。

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