暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》

リリアンの部屋に背を向けてサファイア宮へと戻るその途中。

どこか重たい空気が漂う中、私の後ろを歩いていたダリアが口を開いた。

「あの…リリアンの件ですが、恐らく実家が関わっているのだと思います」

「リリアンの…実家が?」

そう言えば、リリアンから家族の話を聞いた事がない。

親元を離れメイドとして働く者の殆どは何かしらの事情を抱えているけど、リリアンはそんな風には見えなかったし。

妃になりたいと言ってたから、その為に親元を離れてメイドになったんだと思っていたけど…。

正直、妃になれるかどうかは運次第なとこがある。

皇帝が女好きなら可能性はあるし、女に興味がなければどれだけ着飾っても意味はない。

『私が妃になればお父様もお母様も、そしてお兄様も。きっと……』

今思えば、リリアンにも何か事情があったように思える。

「リリアンの実家について、知ってる事があれば教えてほしいの」

「私も詳しく知ってる訳ではございませんが、確か四人家族で上に五つ離れたお兄さんがいたはずです。両親との仲は良く無かったようで、家には極力帰りたくないと言ってました」

…確かに家族仲が良く無かったのであれば、親元を離れてメイドとなったのも理解できる。

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