暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》
妃にならなくて良い。
だから、この先もアニ様の傍で仕えていたい。
そう思うようになった頃、私宛てに一通の手紙が届いた。
そう…実家からのあの手紙だった。
顔が見たい。
そんな優しい言葉はただの建前だったと分かる程に、お父様の目はとても冷たく、とてもじゃないが久しぶりに会う娘に向けるような表情では無かった。
『何故、呼んだのか。頭の悪いお前でも分かっているはずだ。どこから来たのかも分からない女が、皇帝に気に入られているそうだな?』
そう言って、お父様は鼻で笑う。
『そして、それにお前が仕えていると?』
何だかアニ様を馬鹿にされたようで、私はムッとなった。
『アニ様は誰に対しても平等に接する、優しくて慈悲深い方です!』
『はっはっは!仕えている相手だからと、気を使う必要はない。調べたがあの女からは何の情報も出なかった。まず、貴族では無いだろう』
お父様はまさに貴族的な考えを持つ人。
貴族でないかもしれない人が皇帝に気に入られている事が許せないのだ。
『シェパード家こそ皇室の人間に相応しい。卑しい血は皇室への冒涜だ』
だから、呼んだのだろう。
『妃になる前にあの女を殺してこい』
一番近くて、そして見捨てても特に困らない私を。
『他殺のように偽造すれば問題ない。偽犯人を捕らえ差し出せば、皆お前を賞賛する事だろう。もちろん私たち家族も』