暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》
日が暮れて空がオレンジ色に染まり始めた頃、私の元に一人のメイドがやって来た。
「お妃様へお荷物をお届けに参りました」
可愛らしい小さな箱を手に持ったそのメイドは、前髪が目にかかるほど長くて、俯いているせいか顔がよく見えない。
「では、わたくしがお預かり致します」
そう言ってサニーが代わりに受け取ろうとしたが、メイドはそれを拒否した。
「いえ。このお荷物は直接お渡しせよと言われておりますので」
「誰からなの?」
「皇帝陛下でございます」
「陛下から…?」
その言葉に私は思わず首を傾げる。
別に陛下からの贈り物に驚いた訳ではない。
直接私へ渡すようにと、側近でも無いメイドに指示を出された事が何だか意外に感じたからだ。
でも、たまにはそんな日もあるだろう。
そう思って、小さな箱を受け取ろうとした時。
「…貴女は一体どこから現れたのですか?」
私にしか聞こえないぐらいの小さな声で、メイドはそう呟いた。
「…え?」
「妃の座には高貴な血こそ相応しい。皇帝を惑わす貴女は妖か何かですか?」
メイドはそう言って、ニヤリ…と不気味に笑う。
…この人は危険だ。
私の本能がそう告げる。
一歩、また一歩と。気がつけば私は後ろに下がっていた。
「シェパード家こそ…レティサ様こそ妃に相応しいのだ!」