暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》
「…そんなはずないのにね」
陛下はただ、仮の妃が必要だったから側に置いただけで、私が特別だった訳ではない。
私をお城に連れてきたのも、この髪色が珍しかったから。
だから、勘違いしてはダメ。
「…戻ろう」
元の世界に。
陛下と関わる事の無かった、メイド生活に。
争いを生まない為にも。
大切な人を傷つけない為にも…。
起こさないように握られていた手を慎重に退かすと、私はベッドからおりて立ち上がる。
「さようなら、陛下」
これで最後。
陛下と関わる事はもう無い。
だから…。
私は陛下の頬にそっとキスをすると、静かに部屋を後にした。