暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》
「客室の掃除…ですか?」
控室に戻ってきた私に声をかけてきたのは、メイド長のラディカルさんだった。
「えぇ。客室の大掃除をする事になったみたいで、その部署の人手がどうやら足りていないようなの。加勢に行ってもらえないかしら?」
半年に一度、客室部が大掃除をしている事は知っていた。
しかし、人手が足りず応援を要請されたのは初めてだ。
いつもは何日もかけて全部屋を掃除するらしいが、一日で全部屋の掃除でも終わらせるつもりだろうか?
例えば、急なお客様でも来る…とかで。
どちらにしても、私が断る理由は無い。
「分かりました」
返事をすると、私は指定された場所へと向かう。
すると、客室の前に一人のメイドが立っていた。
「あ、手伝いに来てくれた方ですね!ありがとうございます。私は向こうの部屋をするので、この部屋をお願いします」
最初に任されたのは、なんと私がアニとしてお城に居た時に使っていた客室だった。
よりにもよって、何故この部屋に当たってしまったのか…。
あまり思い出したくないのに、この部屋へ来たせいで懐かしくなる。
「この花瓶…いつもサニーが美しい花を飾ってくれていたっけ」
まるで、ここに居たのがつい昨日かのよう。
サファイア宮よりもこの客室の方が居る時間が長かったから、余計に懐かしく感じるのかもしれない。
「…よし!終わり」
掃除が終わり、次の部屋へ向かおうとドアの前に立ったとき。
手を触れるよりも先にドアが開いた。