暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》
確かまだ十三歳だったはずだ。
それなのに、既に私の身長を遥かに越している。
「毎日、牛乳飲んでるからな!」
自慢気なグラントに笑う。
「アニ姉…何で笑うんだよ…!?」
「ごめんね。何だか可愛くて」
「か、可愛い…ッ!?」
逞しく見えても、中身は私の知っているグラントのままだ。
皆、変わりないようで良かった。
私は居たくても、ここには居られないから。
こうして偶に帰省した時に変わりない家族の姿を見ると、安心する。
「アニ」
「どうしたの?」
「それ外したら?見てて暑苦しい」
「あー…」
姉がそう言って指差したのは、三つ編みにした私の金髪。
「この里の皆は知っているんだし、ここには家族しか居ないんだからさ」
「それもそうだね」
自分の髪を引っ張り上げる。
すると、腰辺りまで伸びた黒髪が姿を現した。
実は今までの金髪は偽物で、この髪が本物。
「いつ見てもアニの髪の毛は不思議ね」
私の髪を見て、姉が呟く。
姉と弟は母親譲りの金髪。
父は茶髪は、そんな私は黒髪。
両親にどこか似ている部分があるとしたら、それは瞳の色ぐらいで。
唯一、母親譲りの水色の瞳だけが家族だと証明してくれる。
「向こうで『あの力』は使ってないでしょう?」
「使ってないよ。使う機会もないし」