暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》
* リードside
「陛下は何がお好きなんですか?」
腕を絡ませ、甘えたような声で密着してくるのは香水臭い女。
身なりからしてそれなりに裕福な貴族令嬢らしいが、どうやってここまで来たのか。
気安く皇帝に話しかけ体に触れるなど、命知らずな奴め。
今一度、警備を見直す必要がありそうだ。
「離せ」
「そう仰らずに、もう少しお話しましょう!」
「はぁ…」
それにしても、妃が居なくなった途端こうだ。
話は通じないし、鬱陶しいのでうんざりする。
「このドレス、お気に入りなんです〜!」
そう言って、真っ赤なドレスの裾を広げる女。
正直、着飾ったところで何も感じない。
唯一、俺の心を動かすのはアニだけだ。
美しい黒髪に真っ赤なドレス。
人を傷つける事を嫌い、自分すら犠牲にする。
出会った時から危なっかしくて、目が離せない……そんな女。
アニがいない日々は全て灰色で、退屈な日常に戻ったようだ。