暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》
「邪魔だ。消えろ」
女にそう冷たく言い放つと、腕を振りほどく。
仕事に戻ろうと執務室へ向かおうしたその時だった。
「アニーナ…!?ねぇ、ちょっと!!誰か!!!」
かなり焦ったような女の声がどこからか聞こえてきた。
その声がする方へ歩いていくと、地面に倒れた女と先程騒いでいたメイドの女がいた。
「どうしよう…。誰か居ないの!?」
よく見ると地面に倒れている女は、あの時コーヒーを運んできたメイドの女だった。
金髪に厚い眼鏡。
倒れた衝撃か、その眼鏡は離れた場所に落ちている。
「どうした?」
「え?……へ、陛下…!!?」
女は幽霊にでも会ったかのように驚いていたが、冷静に状況の説明を始めた。
「そうか。力のある者をここへ呼び、取りあえず医務室へ運ぶとしよう」
「はい!」
眼鏡を拾うと、倒れたメイドに近づく。
厚い眼鏡の下がどうなってるのか気になり、隠れた前髪をかき分けると…
「ア…ニ…?」
それは見覚えのあるアニの顔だった。