暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》
「起きてから身なりを確認したか?」
「え…?」
意味の分からない言葉に、フリーズする。
身なり…?
服はメイド着だし、眼鏡だって………ない。ウィッグもない!!
「安心せよ。眼鏡と髪は、向こうの机に置いてある」
「………」
陛下は私がアニだと完全に気づいているようだ。
「あの…陛下…」
「何故、余の元を去った?」
「え…?」
陛下の元を去った理由。
それは簡単な事だ。
「見ての通り、本来の私はメイドです。そんな私が陛下のお側にいて良いと思いますか?偽名を使い、姿を偽り……全てが嘘だらけだった私が陛下の側に居続けていいはずがありません」
陛下だけでなく、周りも巻き込んだ。
これ以上、大切な人が傷つく姿は見たくない。
そう思った。
「私は陛下の側にいて良い人間ではないのです」
自分で口にしていて心が痛む。
本当は……陛下の隣に居たい。
他の女性じゃなく、私を選んで欲しい。
「誰がそう決めた?」
「……え?」
誰かにそう言われた訳ではないけど、私が仮にも妃になったばかりリリアンが傷を負ってしまった。
「素性の分からない女が隣にいれば当然、周囲は反対します。陛下の側にいるにはそれなりの位がいる。私にはそれが無かった」