暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》
「うわぁ~!美味しそう」
食卓には久しぶりの母の手料理が並んでいる。
里芋の煮物にほうれん草の胡麻和え。
そして、豚の角煮だ。
決して豪華な物ではないが、そこに並ぶどれもが私の好物だった。
「え、お父さん…ッ!?」
「元気そうだな」
台所に近い席に座るのは、国境近くの隣町で入国管理官として働く父だった。
「何でこの時間に…?」
久しぶりの父の姿に思わず嬉しさが込み上げる。
父のその職場には夜間勤務も存在する為、私が帰省するからといっても、そう会えるものではない。
「今日は早番だったんだ。まさかそんな日にアニーナが帰ってくるなんて、今日は何だかツイているよ」
父はそう言って、面白そうに笑う。
久々に家族全員揃っての食事に浮かれている私がいる。
里帰りして良かったと、心の底からそう感じた。