暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》
誰もが恐れる暴君陛下
「ねぇ、聞いたー?」
給湯室でコーヒーを淹れる私アニーナの元にやって来たのは、お団子頭をした同僚のアイルさんだった。
彼女はレイガ―男爵家の娘で、職場の中では噂好きとかなり有名だ。
「どうしたの?」
「このお城で、また死人が出たらしいわよ!」
思わず心の中で『またか…』と呟く。
ここでは死人が出るなどいつもの事だ。
『粛清王』『暴君』『血に飢えた猛獣』『戦場の鬼神』
これら全ては、メイドとして働く私達の雇用主であり、このアンディード帝国の皇帝────…リード・フォン・ドミリア・アンディードを指す言葉だ。
気に入らない相手がいれば容赦なく切り捨て、目障りならば他国すら滅ぼす。