暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》
謎の男
***
「まだ朝の五時かぁ~…」
いつも通りの時間に起きてしまった私は、部屋の窓を開けると早朝の気持ちいい空気を吸う。
メイドの生活に慣れてしまうと、休日であってもいつもの時間に起きてしまう。
二度寝する気分にもなれないのでそのまま一階へ下りると、仕事着に身を包んだ父がリビングにいた。
「お父さん、おはよう」
「アニーナ。相変わらず起きるのが早いんだな!」
父は鞄の中身を確認しながら、そう冗談ぽく笑った。
「それを言うならお父さんもね」
「ははっ。それもそうだな」
私の言葉に苦笑しながらも「じゃあ、行ってくるよ」と、父は家を出て行った。
父の居なくなったリビングは一気に静寂に包まれ、どことなく寂しさが増す。
「何をしよう…?」
いつもなら、夜勤の人と交代して掃除や朝食の支度を手伝う時間だけど…。
流石に実家でそのような事は出来ないし、ミーティングも無い。
「時間があるし、朝食でも作ろうかな?」
冷蔵庫の中はそれなりに材料が揃っているから、どんな料理でも出来そうだ。
何なら皆の弁当も作れそう。
―――そうだ…!
六時半を回ると母を始め、眠たそうに目を擦る姉と弟がリビングに姿を見せた。
「何か良い匂い~」
「あら、アニーナが作ってくれたの!?お母さん助かるわ~!」
興味津々の姉に喜ぶ母の姿。
「って言うか、私より料理上手くなるの止めてよね~!」
その出来栄えに、姉は頬を膨らませた。