暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》
―――翌朝。
「ねぇ、サニー。今日は天気が凄く良いし、少しお城の外に出かけてみない?」
窓の外から見える晴れ渡った天気に、思わず私はお茶を淹れるサニーへ声をかけた。
「かしこまりました。それではわたくしは許可を取ってまいります。他の者はアニ様のお支度の準備を」
その一言で待機していたリリアンたちが、一斉に支度に取り掛かる。
「アニ様。本日は大変天気が宜しいのでこの帽子をどうぞ」
「ありがとう」
あまり目立ちたくないので、リリアンに頼んで格好は質素なデザインのドレスにしてもらった。
城下町は人が一番集う華やかな都。
市場を使用する事はあっても城下町のお店を覗いた事のない私にとって、目に映る光景はどれも新鮮で面白いものばかりだ。
「…アニ様。本当に馬車ではなくて宜しかったのですか?」
「う、うん…!偶には歩いてお店を見るのも良いかと思って」
サニーからはお城専用の馬車を勧められたが、『平民の私が馬車を使用するなんて……』と考えた結果遠慮した。
一度強制的に馬車には乗っているが、それはそれは乗り心地が良く、思わず癖になりそうだった。
…ただ、あの時の馬車の雰囲気だけは最悪だった。
「あれって…」
商店街を歩いていた時、看板に『フラワーショップ・カレン』と書かれたお店を発見した私は思わず目を輝かせた。
「花屋ね!」
「フラワーショップ・カレンと言いますと、確か貴族御用達と噂されるお店ですね」
「へ~、そうなの」
そう言えば、以前アイルさんが話していた気がする。
帝国の貴族がご利用する有名な花屋が城下町の商店街にある…と。
……そう言えば、アイルさんは大丈夫かな。
そろそろ、お菓子の作り置きがなくなる頃だけど。