暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》
私の前に立つと、右手で優しく私の頬に触れた。
「へ…陛下…っ?」
そのまま滑らすように、私の髪を撫でる。
「…傷が見当たらないが、上手く隠しているのか?」
「……っ!」
…そうだった。確か陛下は昨日の傷をご存知だったわね。
自分の力で治癒した…なんて言えないし、化粧で誤魔化したと言っても間近で見られている今は恐らく通用しない。
それなら―……。
「今朝、皇宮医の方から見て頂きました。お気遣いありがとうございます。皇宮医の方が上手く治療して下さいましたので…傷が目立たないのでしょう」
あくまでこの傷は、皇宮医の方が治して下さった事にする。
「…そうか。流石は皇宮医だな」
返事するまでに少し間は空いたものの、陛下は納得した様子で部屋から出て行った。
一瞬にしてその場の緊張感が解ける。
「……はぁ。緊張した」
まさか朝から部屋へ来られるなんて思っていなかったから…。