暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》
事前に分かっていれば、あれこれと対策をしたのに。
「やはり、アニ様は陛下の大切なお方ですね!」
「皇宮医様を送って下さっただけでなく、態々このように会いに来られるなんて…。余程アニ様の事が心配だったのでしょう」
メイド達は頬に手を当ててうっとりと話す。
……分からない。
どうして陛下が私にここまでなさるのか。
女の顔に傷が残る事を、そんなに気にされていたと言うの?
「アニ様?」
「…あ、何でもないわ」
けど、ただ自信を持って一つだけ言える事があるとするなら、それは私は陛下の大切な人などではないと言う事。
きっと、これも陛下の気まぐれに決まっている…。
「そう言えば、朝からリリアンの姿が見えないけど?」
思えばサニー達が私の元へ謝罪に来た時も、リリアンの姿だけ見ていない気がする。
「リリアンでしたら急用の為、本日は休まれておりますが………そのご様子からして、もしやあの子から連絡を受けておりませんでしょうか?」
「えぇ、今知ったわ」
そう言葉を返すと、サニーの顔が青ざめていくのが分かった。
「…た、大変申し訳ございませんでした!」
「え…っ?」
サニーがこちらに向かって深く頭を下げる。
「今後、リリアンには徹底して教育をして参ります!罰であれば、どうかこのわたくしにお願い致します…!」
確かに連絡を怠る事はメイドにとっても、お城で働くにしてもいけない事。
報告、連絡、相談。
この三つは、このお城で働く人であれば誰もが知る暗黙のルールでもある。
以前、貴族をもてなした際に一人のメイドが報告を怠った事でその貴族が激怒し、宮殿を追放された事件があった。
これはメイドの間では有名な話だから、サニーもきっと私がリリアンを追放するのだと思っているのかな。