暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》
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執務室にノックの音が響く。
「失礼致します。コーヒーをお持ち致しました」
「そこへ」
「かしこまりました」
机に並べられたコーヒーへチラッと視線を向けると、直ぐに手持ちの資料へ視線を戻す。
「ありがとう」
その場に居合わせていたファンの元にもコーヒーが運ばれ、ファンは上機嫌に口へ運ぶ。
「そう言えば、お前。噂になってるぞ」
「あ?」
ニヤニヤ…と気持ちの悪い笑みを浮かべるファンを冷たく見る。
「気持ちが悪い」と言い捨てて見せると、ファンは「酷い!」と言いながらも面白そうに話始めた。
「早朝からあの女性へ会いに行ったらしいな?」
「何を言うかと思えば…。怪我の具合を確認しに行っただけだ」
「お前らしくない行動だな。やはりあの女性に興味を惹かれたんだろう?」
何を馬鹿な事を。
俺が女に興味を抱く?
そんな事あるはずがない。
どうせ、こいつが面白がって戯言を言っているだけだ。
分かっていてもどうも集中が出来ず、思わずため息をつく。