暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》




***


執務室にノックの音が響く。



「失礼致します。コーヒーをお持ち致しました」


「そこへ」


「かしこまりました」


机に並べられたコーヒーへチラッと視線を向けると、直ぐに手持ちの資料へ視線を戻す。



「ありがとう」


その場に居合わせていたファンの元にもコーヒーが運ばれ、ファンは上機嫌に口へ運ぶ。


「そう言えば、お前。噂になってるぞ」


「あ?」


ニヤニヤ…と気持ちの悪い笑みを浮かべるファンを冷たく見る。



「気持ちが悪い」と言い捨てて見せると、ファンは「酷い!」と言いながらも面白そうに話始めた。


「早朝からあの女性へ会いに行ったらしいな?」


「何を言うかと思えば…。怪我の具合を確認しに行っただけだ」


「お前らしくない行動だな。やはりあの女性に興味を惹かれたんだろう?」


何を馬鹿な事を。


俺が女に興味を抱く?


そんな事あるはずがない。


どうせ、こいつが面白がって戯言を言っているだけだ。



分かっていてもどうも集中が出来ず、思わずため息をつく。


< 89 / 178 >

この作品をシェア

pagetop