暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》
***
「……おや。お前がお菓子を運ばせるなんて珍しいな」
執務室で皇帝陛下に書類報告をしていた宰相のファン・ギルド・ロンザードは、運ばれてきた見るからに甘そうなバタークッキーをジッと見つめた。
「甘い物が苦手ではなかったのか?」
「………」
「おい、聞いてるのか?」
沢山の書類が山積みになった机に向き合い、黙々と作業をする陛下からは何の反応も無い。
「お~い、聞いているのか?」
「………うるさいな。殺されたいのか」
「おぉ、怖い。俺とお前は昔からの仲ではないか~!」
「幼馴染だろうが、殺す時は殺す」
「お前は冷たいなぁ~…」
陛下の反応にファンは思わず苦笑した。
「……で、これは俺が食べていいのか?」
「駄目だ」
即答する陛下にファンは不思議そうに首を傾げる。
「何故だ?お前、食べれないだろう」
「確かに食べれない」
「では、何故運ばせる?」
「運ばせているのではない。勝手に運んでくるのだ」
「どうゆう事だ…?」
仕事にならないと感じた陛下は手を止めると、コーヒーの運ばれた席へ移動した。
そして、そのバタークッキーを手に取ると一口かじる。
「お…お前、平気か…ッ!?」
予想外の行動にファンが慌てて陛下の元へ駆け寄る。