暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》
宰相職に就いてなければ、もっと外に出られたはずなのに。
何か理由でもあるのかな…?
「気になりますか?」
「…え!あ、その…」
何も言っていないのに、どうして分かったのだろう…!?
「ふふっ。アニ様はとても正直な方ですから」
「それは一体…」
「表情豊かと仰いますか…」
「え…!?」
それってつまり、表情に出ているって事よね!?
先程の見透かすような言動もそのせいか…。
「アニ様」
「はい…」
「どうか、陛下を嫌いにならないであげて下さい」
「え?」
ファンさんの言われている意味が分からず、思わず聞き返す。
始めは陛下の事を恐ろしい人だって思っていたし、強引にここへ連れて来られた身だけど……嫌いだと思った事はない。
悪い噂ばかりで怖い方だとばかり思っていたけれど、冷静に考えてみれば理不尽に罰を与えるような方ではないし。
ただ、少しやり過ぎるだけで……。
本当は不器用にも優しい方だし、意外にも女性の顔に傷が出来る事を気にされるような方だった。