【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
「やべ!見られちったよ?!」
「ね、でも見た?すごい綺麗な人だよ。絶対モデルじゃん!サインもらっとく~?」
隣にいる潤の顔を覗き込むと、嬉しそうに空を見て微笑んだ。
「一応モデルやってる男を前にして失礼な子たちだよね~……。
でも菫目立ってるから仕方がないっか~」
「え?!私目立ってる…。ちょっと嫌だな」
少しだけ身を縮めると、潤は背中を叩いた。
「良い意味で目立ってるって事でしょ~?もっと自信をもって背筋を伸ばしてろ。
お前のように目立つ女は自信なさげに身を縮めると悪い意味で更に目立つからな!顔を上げて前だけ見てろッ!」
やっぱり魔法使いだったのかしら?私の幼馴染は。いつだって前向きな言葉を選ぶのは、小さい時から変わらない潤の癖だけど。それが今はこんなにも前向きにさせてくれる。
目立つのは悪い事だと思い続けていた。女性は出来るだけ質素でいて、控えめであらねばならないと考えていた。だから私はこんな晴れた日でもいつだって下ばかり向いて、目立たない洋服を着て、誰にも見つからないように歩いていたのかもしれないわ。
でもそれが損をしている気分になるなんて。潤といると根底から考えが変わって行くような気がする。離れていた期間潤は色々な経験をして、様々な人と出会ってきたけれど…私は時間を止めたままだったんだ。
「さっきから菫と歩いていると注目されるな~」
私は苺のクレープ。潤はチョコレートのクレープを注文し、食べながら街を歩いた。
確かに、道行く人々が振り返って行く気がする。最初は派手な服を着ているから笑われているか不思議がられているのかと思ったものだ。
けれど道行く人々の目が羨望だと気づくと、途端に世界が変わって行く気がした。