【完】Dimples 幼馴染のキミと僕

潤がモテない訳ない。

S.A.Kの息子でありながら、飾った所も偉そうにもしない。誰に対しても同じ態度で接して、優しい。

だから私はこんな出来すぎた幼馴染を持って、昔は酷いコンプレックスに駆られた日もある。

休日はあっという間に終わりを迎える。帰りにスーパーに寄って必要な物と食材を買ってきた。

そんな何気ない事でも男性とした事がなかった私にとっては新鮮で楽しいものだったの。

それが潤と一緒だから楽しいなんて、そんなのまさかだ。これはあくまでも潤が用意してくれた’恋人ごっこ’なのだ。私の夢を叶えてくれると言ってくれた優しい男の最上級の気配りに過ぎない。

「菫って相変わらず料理上手だよなー」

それにしても珍しい形をしたキッチンだ。

お洒落な造りで解放感がある。これは…大理石で出来たキッチンなのだろうか。

私はそのキッチンで野菜を切って行く。潤がリクエストしたのはカレーライス。料理の基本中の基本だが、子供っぽい食べ物ばかりが昔から好きなのは変わらないらしい。

とはいえ、私だって人の事は言えず相変わらず子供みたいな物ばかりが好きだ。

大理石の上で両手を乗せて、料理をしている姿を見ていた。

「それにしてもこれは何よ…」

「可愛いでしょ~?それは~…確かぁ~高校の時の授業で作ったんだよ。
何で女物作ってるのって先生に怒られたっけ」

エプロンまでもが潤の手作りらしい。白のふりふりのエプロンだった。どこかいかがわしい匂いがするのは言わないでおく。潤と変な雰囲気になったらそれこそ嫌だし。


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