【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
学生時代の友人で現在舞台女優をやっている佐波の家にいると。仕事の関係でどうしても家にいては集中出来ないから暫くの間はそちらの家で過ごすと。
仕事の関係という嘘は信じちゃいないだろう。あれだけ興奮して父に反抗をしたのは初めての経験だったから。…けれど佐波のマンションにいるという言葉は信じてくれたと思う。
まさか私のような真面目な娘が幼馴染とはいえ男の家にいるとは夢にも思わないだろう。
つーか…知られたら引き戻されるに決まっている。たとえ潤であろうと嫁入り前の娘が男の家で暮らすなんてはしたないと思うに違いない。
予防線を張っている私は、どこまでも良い子ちゃんが抜けきらない。
派手な洋服を着て街を歩いてみたとしても、根本の性格は変りはしないのかもしれない。
「お父さんには心配をかけないように言っておいたから、潤に連絡が来ることは無いと思う」
カレーライスが出来上がって一緒に食べている時、一部始終を説明した。
潤は何とも言えない顔をしていた。けれど一緒にいるのが潤だとバレたらあの父の事、潤を責め立てるに違いない。そして潤の両親のもとへ行き「あんたの息子は何を考えてるんだ」と潤を誘拐犯に仕立て上げるに違いない。
「別に俺はおじちゃんに本当の事を言ってもいいと思うけどな」
「駄目よッ!それじゃあ……」
あなたに迷惑が掛かるわ。そう言いかけて、先に潤が思いもしなかった事を口にする。
「怒られちゃうから、怖い?」
「そうね……」
本当は怒られるのはあまり怖くは無かった。自分の鬱憤を父にぶちまけた日から、少しずつ何かが変わりゆくのを感じたから。でもそれを言葉には出さなかった。
あなたに迷惑を掛けたくないのよ。素敵な物ばかり見せてくれる、魔法をかけてくれるあなたが…間違っている筈ない。