【完】Dimples 幼馴染のキミと僕

焼鮭と卵焼き。ほうれん草のお浸し。なんつー出来る女だ。これは結婚しても完璧に家事をこなすタイプだ。

私は何も出来ない、と彼女は自分の評価をいつだってそう下すけれど、君は思っているよりも人より色々な事が出来るだろう。

何故ここまで自己評価が低いのかが疑問なのだが。


出してくれたスムージーは不気味な色をしていた。けれど飲んでみると甘酸っぱくて、身体に良さそうな味がした。

まだパジャマ姿だった俺に対して、筋トレを終えたと同時に菫は着替えてきた。

それはS.A.Kのシャツとカーディガン。下は黒いパンツだった。シンプルな洋服もよく似合っていたけれど、俺は昨日のように華やかな菫も好きだ。



ゆっくりと朝ごはんを食べて、会社に行く準備を始める。

真っ黒の髪をゴムで後ろにくくり、ブラウン系の無難なメイク。それにしたってテキパキ動く女である。朝から騒がしいとも言う。

仕事に行く前に洗濯機から洗濯物を取り出し、それを浴室に干して終いには掃除機までかけ始める。

朝食を終えてボーっとソファーの上からその様子を見守る。時折腕時計に目を落とし、慌てた様子で掃除機を片付ける。

「じゃあ私は会社に行くわ。今日の夕ご飯は何がいい?」

そう問われるとまるで新婚夫婦みたいだ。

思わずくすぐったくなる言葉でもある。

「今日は俺が作るよ」

「え?潤料理出来たっけ?」

「普段はあんまりしないけど、やろうと思えば出来るよ。もう一人暮らしして7年くらいになるんだから。
菫何が食べたい?」

「そうね」

うーんと少し頭をひねり考えて、パッと何かを思いついたように口を開く。


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