【完】Dimples 幼馴染のキミと僕

モデルと訊いて、吉澤さんの瞳はきっらきらと輝き出した。分かりやすい人だ。

俺はこの人が嫌いではない。寧ろ好きなタイプの人間だ。普段はこんなでも、仕事はきっちりとこなしてくれるし、当たり障りもなく軽い彼は現場ではいつもムードメーカを買って出てくれる。

年齢も近くて、S.A.Kの仕事をしながら自社のモデルをしている俺とも仕事では顔を合わせる機会も多く、メディア露出などの仕事は彼に一任している。いわばマネージャーのような感じだろうか。

スケジュール管理もしてくれているし、かなり助かっている。

欠点があるとするのならば無類の美女好きで、中々に女癖が悪い所か…。

「そういえばさ来月の撮影なんだけど…突然モデル事務所の女の子がNGを出してきてさー。代わりのモデルを探そうと思うんだけど中々イメージに合う子がいないんだよなぁ…」

「えーそれ酷くないですかー?予め決まっていた仕事でしょー?」

「何でも東京コレクションのモデルに抜擢されたらしくその仕事を優先していきたいって。
ねー、奈々ちゃんや飯田さんのつてで良い子いない?
今度S.A.Kから出す大人路線の新しい店舗の広告なんだけど。いまいちコレっていう女の子がいなくてさ…」

それは知っている。

冬から新しく出す店舗は、10代の子達向けと言うよりかは20代をターゲットにしているシンプルで大人っぽい路線のお店である。

そしてその撮影のメンズの方のモデルは引き続き俺がお願いされた。

困り切っている吉澤さんに対し、飯田さんは話を聞いてない振り。奈々ちゃんは困りながら「私なんてどうですかー?」と冗談めかした事を言う。

大真面目な顔をして「ちびは却下」と吉澤さんに言われ、奈々ちゃんが怒っている。


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