【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
頭ごなしに怒るとか断るではなく、自分に自信がないといった感じではあった。
モデル自体が嫌なのではなくて、自分がモデルをするという事が嫌だといった感じではあった。
俺的にはこんな適役は他にいないと思う。どうしていつも菫は自分にこんなに自信がないんだろう。
「そんな事ないよ!やって見なきゃ分からない。
それにS.A.Kの商品の事は俺が1番よく分かっている。その俺が菫にモデルを頼んでいるんだから、それは間違いないだろ」
「だって私カメラの前でなんて笑えないわ」
「大丈夫だよ。うちには優秀なカメラマンがいる。きっと菫も笑わせてもらえる。
それにプロのスタイリストさんやメイクさんは俺なんかよりすっげぇーぞ!菫をもっともっと綺麗にしてくれる!
なぁやってみようよ。俺もお前と一緒に仕事してみたいよ」
熱意は伝わったか…。菫はまだ考え込んでいたが、頑なに拒否する事はなかった。
困ってはいるようだが、少しだけ考えさせてとだけ言って再び箸でハンバーグを摘まむ。
考えてくれる余地はあったのか。頭ごなしに拒否されるとばかり思っていたから、それは意外だった。どう考えてもメディアに露出したがるタイプでもないし、人より目立つことも昔から嫌っていた。
小学校の頃から運動会ではリレーのアンカーは嫌がってたし、学芸会の劇で主役をやるのも嫌っていた。そういう話が出ても一切引き受けないタイプだとは分かっていた。
じゃあ何故モデルに菫を推薦したかと言えばこれは勝手な話になるのだが、勿論企業のイメージに合っているのを前提として、菫に知らない世界を知って欲しかった。
そして何よりも純粋に俺が一緒に仕事をしてみたかったというのもある。