【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
6.菫■初めてのモデルの仕事■
6.菫■初めてのモデルの仕事■
潤の家で過ごしてひと月が過ぎた。
慌ただしく過ごせばあっという間の毎日で、ホームシックにかかった事はない。それどころか、どこまでも自由でこの生活を楽しんでいた。
ひとりきりでいたらきっとこんな気持ちにはなれなかったのだと思う。
何をするにも、潤が傍らにいてくれたから寂しさを感じる暇もなかったのだと思うの。
シャワールームがガラス張りなのだけは気に食わなかった。だからシャワーを浴びる時のみ互いに部屋に入っている約束をした。小さい時は一緒にお風呂に入った仲だけど、大人になった今話は別だ。
潤は私のしたい事を好きにさせてくれて、それに付き合ってくれた。
幼馴染だからときめきなんてあってないようなもんだったけれど、それでも毎日笑っていられたのは潤のお陰だったと思う。
したことがなかった事。
行った事のないお店。
元々好きだった料理を誰かの為にするのは楽しかったし、防音のマンションで好きな時間にフルートを吹けるのも嬉しかった。
休日は潤とふたり、出かけた。…これはデートという事になるのかしら?ただの幼馴染であるふたりが一緒に出掛けるという事をデートと称するのは、少しだけおこがましい気もするのだが。
どこへ行っても楽しかった。
潤の作ったド派手な服にも慣れた。それどころか彼の作る物を体に身に着けると、世界がパッと明るくなる気さえした。
そして潤の作った服は私の為に用意してくれたかのようにぴったしだった。
メイクやヘアセットもしてもらう。潤は絶対に自分じゃ選ばない色を選ぶから、鏡に映る人がまるで他人のように見えたもんだ。
そうやってお洒落をして出かけて、人から注目を浴びるのも気にはならなくなっていた。だって私の隣には私よりもずっと派手な潤がいてくれたから。