【完】Dimples 幼馴染のキミと僕

軽快に話を掛けて来てくれたのは、潤の会社の吉澤さんという方だった。少しだけちゃらちゃらしていて、髪の毛も少し長くほんのりパーマを充てている。

普段ならば絶対に絡まないタイプの人種だが、無理やり手を引っ張られて握手する形になる。

「え~めっちゃ丁寧な子じゃ~ん。もしかして菫ちゃんも潤と同じお嬢様って奴?!そういえばどことなく気品があるよね!」

「え、え、あの……」

マシンガントークの吉澤さんにたじたじだった。助け舟を出してくれたのは潤だった。

「ちょーッ!汚い手で触んないで下さいよ、吉澤さん。」

「お?なんだ。お前まさかこんな美人と出来てるなんて事ねーだろーな?!
お前ばっかりずるい!俺に合コン相手も紹介してくれないでッ」

その吉澤さんの頭を後ろから殴りつけたのは、驚く程派手髪をしている背のとても小さな女の子だった。おそらく私よりも年下だろう。

「よっしーウザい。そんなんだから女の子にモテないのよ?
菫さん、怖がらせてごめんなさいね。
私はヘアメイクを担当する山崎奈々と言います。
てゆーか、潤くんめっちゃ美人さんじゃないー!えぇーお化粧なんてする必要ないくらい肌キレーーー!」

そう言って小動物のような彼女は、柔らかい手のひらで私の頬を触る。

「きゃーッ!赤ちゃんの肌みたーいッ。真っ白だし羨ましー!
ねぇ飯田さん被写体がこれだけの素材だと仕事のし甲斐もあるでしょう?」

振り向いた彼女が見つめた先に、カメラを弄る男性がひとりいた。

髪はボサボサで、髭も生えている。何ともワイルドな男性だ。真っ黒に日焼けをしていて、一瞬怖そうに見えたけれど、私をジッと一瞥するとニカっと笑い「こりゃ美人だ」と言った。


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