【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
「その笑顔最高ッ。女神」
「ぷッ女神って……」
「んーもっと良くなった。このむさっ苦しいおっさんの顔が好きな人だと想像してみて」
「アハハ、むさっ苦しいおっさんって自分で言いますか?」
「いいじゃん、その顔。
じゃーそこの椅子にもたれかかってみよっか。
おっさんを好きな人だと思って手を伸ばす感じで。
ん~ッ!最高!じゃあ今度は振り向く感じで!」
好きな人、と聞いても西城さんの顔を思い出せなかった。
あんなに好きだと思った人なのに、何故かぼやけてしか思い出せない。
代わりに、撮影を見守っている潤の姿ばかり目がつく。目が合うと、優し気な笑みで微笑んでくれるから、何故か安心出来た。
これは不思議な話だが、絶対に出来ないと思っていたモデルの仕事。写真を撮られる事に慣れていなかった私。けれどその緊張も数分間だけだった。
プロにメイクをしてもらい、洋服を選んでもらうと少しだけ自分に自信が持てるような気がした。
それにカメラマンの飯田さんが「可愛い」とか「綺麗だ」って褒める度に、悪い気はしないのである。この人は自然に人を褒めるのが上手すぎる。
持ち上げられてすっかりその気になってしまった私は、ついつい自分でポーズを決めだしてしまう。
そして撮影が終わったかと思えば直ぐに着替えさせられて、別の洋服の撮影が始まる。
何百枚も撮ったかと思われる。たった一着の洋服の撮影にこんなに時間が掛かるなんて。例え何百枚と撮ったとして、雑誌やカタログに載る写真は数枚だろう。
そのベストショットを探すために、何度も何度もシャッター音を切る。