【完】Dimples 幼馴染のキミと僕

カメラマンだけではない。スタイリストさんもアクサセリーひとつ選ぶのだって時間を掛けた。何個も手に抱え、1番洋服と私が映えるような物を選んでくれる。

改めてプロの仕事はすごいと感じさせられた。

「すごいね菫ちゃん。プロのモデルさんみたい」

途中メイク直しをしてくれた奈々さんが、リップを塗り直しながら言った。

「いや全然ですよ。私すっごく緊張しちゃって…」

「えー?全然そんな風に見えなかったですけどねー。直ぐに慣れたから度胸のある人なんだなーって思いましたッ。
新人のモデルさんなんて最初はすごいがちがちで仕事になんなかったりもするもんなんですけどね。菫ちゃんは器用な人なんだと思うッ。
潤くんと一緒だね。感覚で自分の今すべき事を的確に判断出来るっていうか」

「私と潤とでは人間の出来が違いすぎるわ。潤は昔から何でも出来て器用だから」

「あはは~。潤くんと同じ事言ってる~。さすがは幼馴染。幼馴染って何か良いですよね~。憧れちゃう。

ん~、やっぱ次の服は赤リップの方がいいなぁ」

幼馴染に憧れると言いながら、奈々さんは深紅の口紅を私の唇へ塗る。

違う洋服を何着か着せ替えされ撮影したかと思えば、次は潤のメンズの撮影が始まった。

プロに髪を整えて貰い、少しだけメイクをして、自社のブランドの洋服を着る。

潤は私とは違って様々なポーズをカメラの前で作り、完璧な笑顔を向けた。…いくら見慣れた幼馴染とはいえ、その姿は別人のようで不覚にもあの潤がかっこよく思えてしまったのだから。撮影マジックとは恐ろしいものである。


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