【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
ころころと変わる表情。すごく甘い笑顔だったり、冷たい視線を向けて見たり、かと思えばひょうきんな顔を見せてみたり。やっぱり私なんかよりずっと表情を作るのが上手な人だわ。
まぁそれも仕方がない。経験のある潤と私では雲泥の差だろう。
カメラマンの飯田さんの褒め言葉がスタジオ内に響き渡る。
ラストの撮影は潤と私のショットだった。
ストライプの何ともまあ奇抜なスーツを着た潤と、スミレ色のショートドレスを着た私。
向き合うと何だか恥ずかしくって、こそばゆかった。潤は平然とした顔をして、私の手を取る。そしてふわりと巻かれた巻髪を手で梳いて、「綺麗だ」と真剣な眼差しで言う。
こんなのは可笑しいわ。目の前にいる潤が、昔見たアニメのお伽話の王子様に見えてしまうなんて。どうかしたとしか思えない。私が愛してやまなかった物語の中の王子様。その姿に潤を重ねてしまうなんて。
腰を抱き寄せられてしまい、ドキドキしてしまう。相手が潤なのにそんなのありえない。視線を顔に移すと、まるで愛しい物でも見るかのような優し気な微笑みを落としてくれる。それもまた、あのお伽話に出てくる王子様のようだった。
まさかそれに見惚れてしまっていたなんて、口が裂けても言えないわ。撮影はあっという間に終わった。
しかし、午前中から始めてもう外が暗くなっているのを知り、更に驚いた。
いつの間にそんなに時間が過ぎ去ってしまっていたというのだろう。
撮影が終わってパソコンの中に映し出されたデーターを見て更に驚いた。
…これは本当に私?それに潤と私が写真の中では恋人同士に見える。不思議すぎる。