【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
「おーいいじゃん。菫めっちゃ綺麗に撮れてるなー。お前朝からすっごい緊張してたけど何でも出来るからびっくりだわー」
「自分でも出来上がりの写真を見てびっくりよ。こんなに上手に写ってるなんてカメラマンの腕が良いのね…」
その言葉に飯田さんは嬉しそうに大笑いした。
「モデルが良いと写真も良く映える。
最初はちょっと緊張していたみたいだけど、直ぐに慣れたね。
人前で何かをするのは慣れてる方?」
その問いかけに小さく首を横に振る。
まさか、人前で何かをする事に慣れているわけない。ましてやモデルなんて初めての体験だったわけで。
けれど不思議な事にメイクをして服を着ると、人が変わったような気持ちにはなった。それこそ魔法と呼ぶに相応しい。誰でもそうなる物なのかもしれない。美しいメイクを施してもらい、素敵な洋服に身を包めば、自分が物語の主役になったかのような錯覚に陥るのかもしれない。
「そりゃー菫は昔からフルートの発表会とかしてるし、今でも付き合いでステージには立つだろう?
だから舞台慣れしてるんだろう」
「それはあるのかも…。確かに私は舞台の前はすごく緊張しちゃうけど、本番が始まってしまえばその世界に入れるというか…
そうね!これはもしかしたら妄想が激しいのかもしれないわ。私はきっとその世界観に入ってしまうと自分がお姫様だと思い込んでしまうのよ。きっと思い込みが激しいのよ」
別に笑わすつもりで言ったつもりはなかったが、その発言に潤も飯田さんもきょとんとした顔をして、その後直ぐに声を上げて笑い出した。