【完】Dimples 幼馴染のキミと僕

せっかく潤と一緒に見ようと思って、昨年公開された実写版のアラジンをレンタルしてきたというのに…。

温厚な潤が何をそんなに怒っているのかは、私には理解出来なかった。

人の気持ちは変わる物だ。積み重ねていった時間の中で、静かにでも、確実に。その証拠にあなたは幼き頃にした約束なんてすっかり忘れてしまっている。



次の日になっても、潤の機嫌はどうやら直っていないようだった。

「潤、今朝はトーストで良い?」

「うん……」

「ジャムは?いちご?マーマレード?」

「そんなんどっちでもいいよ」

…だから何をそんなに怒っていると言うのよ?!

私あんたに何かした?!

余りに理不尽な怒りにこっちの方がキレそうよ。

テーブルにいちごとマーマレードのジャムの瓶を叩きつけると、下ばかり向いていた潤の肩がびくりと上がる。

「何を怒っているのよ!感じが悪いわねッ!」

「別に怒っちゃいないさ。呆れているだけ。
ちょーっと相手に優しくされたらほだされちゃって、また会ってもいいかなんて言う女だとは思わなかった」

こちらを見ずに不機嫌な顔のまま潤が言う。

…やっぱりというか大倉さんの事だったか。けれどそれは潤に関係のある事だったのかしら?

私だっていつまでも潤の世話になっているのは申し訳ないと色々と考えているのに……。


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