【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
遠慮がちにこちらへ訊ねる。その瞳は垂れ下がり、やけに自信がなさそうだった。
馬鹿だな、菫は。そう笑い、再び頬に手を置く。
「そりゃー当たり前だろう。お前は俺の か、か、彼女なんだから」
「なんでどもってんのよ」
くすりと笑う菫の笑顔の先に花が見えた。
「人には運命の人が必ずどこかにいるんだと思う。
その人に出会える確率は数億っていう奇跡の確率なのかもしれない。
私にとってそれがたまたま幼馴染の潤でラッキーだったと思うんだけど?だって運命の人と生まれた時から一緒なんて素敵な事じゃない」
あぁ、やっぱり君はロマンチストな人間だ。
抱き寄せると、菫の香りが鼻を掠める。ずっと隣にいてくれた人。
それが運命だというのならば、俺が今まで歩いてきた道だって結局は君へ繋がるための日々だった。何度離れたとしても、決して切れない絆を繋いできた。
君は確かに聖域だ。俺にとっては特別な。けれど、俺は君の前ではただの男でいたい。
再び菫と向かい合おうとした時だった。
「じゃあおやすみ」
え?
布団を被り、数分すると菫は安らかな寝息を立て始めた。
何と無防備な寝顔だ。俺はモヤモヤを残したまま、自分の欲望と戦いながら悶々とベッドに寝転んだ。眠れない夜を過ごした。対称的に菫はぐっすりと眠っていたようで、時折寝返りを打ってこちらを向くからドキドキは止まらなかった。