【完】Dimples 幼馴染のキミと僕

S.A.Kの新しいラインの事は社長である父に任せられている。

最近は中々に忙しい。S.A.Kという会社に所属しながらも、モデルの仕事もこなしていたもんだから。でも忙しいのは自分の性にあっているのだと思う。

営業として人と会う事も好きだし、新しく出来上がった洋服を見るのも自分には良い刺激になる。

「潤ー、新しいワンピースの試作品上がってきているぞーチェックしてー」

会社に着くとさっそく俊哉に言われた。

机の上に上がっている試作品に手をかける。良い感じだ。生地も良い物を使っている。シンプルだけど、誰にでも手を出しやすいデザインだ。

この間の撮影でも実際着てみたが、着心地も良かった。

今まではティーン向けに安く良い物を提供してきたが、今度は少し大人向けの物。値は少しだけ上がるが、満足のいく仕上がりになっているようだ。

「お前は女に触るように愛し気に洋服に触るな」

ふっと優し気な微笑みを浮かべながらそう言われ、気が付いた。

洋服は昔から好きだった。特に女性の服はキラキラしていて宝石みたいに美しい。シルエットも男性のそれとは大いに違う。

俺が洋服を好きな理由。それは特別な物を着るだけで、うきうきとした明るい気分になるからだ。新しい洋服を手に入れた時の嬉しい気持ち。そしてそれはいつしか提供する側に回りたいと思ったのは

俺が作る洋服を手にして、それをずっと大切にしてくれた…菫のような存在がいたからだろう。それはデザインする側にとって大いに誇りだ。

「そういえばさー、菫と付き合う事になった」

新しく上がってきたワンピースに目を通しながら何気なく言った言葉に、俊哉はガタっと椅子をずらし立ち上がり、こちらへ大慌てで駆け寄ってきた。

「マジで?!」

熊さんのような男が驚くと、それはそれで迫力がある。

驚いた後の満面の笑みは、体型に見合わずに可愛らしい。



< 169 / 321 >

この作品をシェア

pagetop