【完】Dimples 幼馴染のキミと僕

「実の親から信頼されてない俺って可哀想じゃん。つーかさ、ねーちゃんもガキじゃねぇんだからそんな過保護になる事もないだろうー。
そろそろ自由にさせてやれって。いいじゃん。潤くんは昔からの知り合いだし、潤くんほど信用できる男も早々いないってー。
それにS.A.Kの息子だよー?お父さんの会社よりずっと大きい大企業でしょー?」

「うるさい!お前は黙っていろ!
駄目だ駄目だ!菫冷静になれ。今までお父さんの言う通りにしてきて間違いはなかっただろう?
学校だってお前に1番合う所に進ませて、就職だって篠崎リゾートでお前は楽しそうにやってきたじゃないか……。
西城さんの事は仕方がない。だからってヤケになって潤くんはないだろう…潤くんは……」


真っ赤になった顔。今にもブちぎれて血管でも切れてしまわないか心配だった。

確かに父の言う事に間違いは無かった。父の言われた通りに人生を歩いて、私は何ひとつ怪我をする事もなく安全な道を歩いてこれた。

でもいつからだろう。大好きだった父の側にいるのに息苦しさを感じるようになったのは。間違いはないと自分に言い聞かせて、私は父の好む洋服を着て、父の望む道を歩いてきて…でも気づけば疑問だらけで。

私は自分の人生を、自分で選択した事なんて一度だってなかった。そのぬるま湯の中に浸かって、かしつがれて遊んでいただけなのだ。


今でも父と向き合うのが怖い。今日で私は父の理想とする娘ではなくなったからだ。父の理想とする娘でなくなった今……私の価値とはどこにあるのだろうか。



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