【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
きっぱり言い放つと、立ち上がった父の両手がわなわなと震えていた。
ここまで自分の想いを素直に言うのは、初めての事だった。一度言い始めたら今まで溜まっていた物が溢れ出したように止まらなかった。
「大学だって好きで言った訳じゃない!
音大にだって行って見たかった…。もしかしたら違う道だってあったかもしれない…!
お父さんはいつだって潤を悪く言うよね?!けれど私は潤の生き方は間違っているとは思えない!
潤は自分のしたい事の為に努力だってしてる。自由に生きているように見えて、お父さんなんかよりよっぽど自分の将来をきちんと考えている!
S.A.Kの社長の息子で楽に生きる道だって勿論あるけれど、自ら難しい道を歩いていこうとしてる。私はその生き方を馬鹿みたいなんて思わない!
何よッ!篠崎リゾートがなんだっていうのよ!お父さんは本当にこの仕事が好きで誇りをもってしているの?!ただお金の為だけに…会社を大きくするためだけに娘の結婚を利用しているだけじゃないのよッ!」
「菫!」
そこまで言ったら母の私の名を呼ぶ声が聴こえた。
それと同時にお父さんの右手が私の頬へ飛んできた。
私を殴った後、父は自分の手のひらを見つめていた。そしてハァハァと肩で息をしていた。
父に殴られるのは勿論初めての経験で、小生意気な口を利く大地ですら殴られた事はない。
「おい!女を殴るなよ!」
大地が私と父の間に割って入る。今にも殴り掛かりそうな勢いだ。ゆっくりと椅子を引くと、父は自室へと入って行った。