【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
「お父さんも苦労してきた人だから……。
でも間違いなく菫の事を1番に考えているのよ?
菫には幸せになって欲しい…。菫には苦労を味合わせたくないってその一心で…。
だからお父さんも菫が篠崎リゾートの為に生きろなんて本当は思っちゃいないの…。あの人は伝え方が不器用な人だから…」
「お母さん……。でも私は潤と一緒にいたい。」
「潤くんと一緒にいる事も、いずれあなたたちが結婚をする事になってもお母さんは何も反対はしませんよ」
「でもお父さんは話も聞いてくれやしない…」
「いつか、いつか、ちゃんと分かってくれますよ…」
いつかっていつよ。冷静に切り出したのに勝手に怒り狂って部屋に閉じこもったのは父の方ではないか。
どちらが子供なんだか…。認めない一点張りで、大した理由も述べないままに…。
父も父だが、母も母だ。どうしてあの人に口答えひとつもせずに良妻賢母でいられたのか。それじゃあお母さんだってあの人の奴隷に過ぎないではないか。
アイスノンをテーブルに置いて、立ち上がるとまた母は心配そうな眼差しをこちらへ向けた。
「帰るわ…」
「帰るってどこに…」
「潤の家に。だって私はあそこで暮らしているんだもの。
お父さんが許してくれなくたって、私には自由に生きる権利があるわ」
母は再び私が家を出て行く事、止めはしなかった。けれど心配になるから連絡はちゃんとしてね、とだけ言って。
元々何を言われても帰るつもりはなかったから、荷物は持ってこなかった。
まさかここまで頑なに反対されるとは思わなかったけど。賛成されるとも思わなかったけれど、冷静になって話くらいは聞いてくれても良かったじゃないの。