【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
菫も弟の大地も中学受験をしている。本来ならば幼稚園から私立に進ませたかったのだろうが…。
そこは記憶が曖昧だが俺の母とおばちゃんが仲が良かったから子供たち同士は同じ幼稚園に行かせたかったらしい。
将来の事を考えると今からでも受験をした方が良い、と言っていた。潤くんはとても優秀だし、と。
実際俺は優秀だったのだ。勉強をしてもスポーツをしてみても人より出来た。菫よりも。けれど負けず嫌いの菫が陰で努力をしているのは知っていた。
俺は努力をしなくても一通りなんでもこなしてしまうタイプだからこそ、努力が出来る菫を尊敬した。
中学受験をしなかったのは簡単な理由だった。将来的に高校も専門分野の変わった高校に進もうと思ってたし、何より学区内の友達と離れたくなかった。
それがおじちゃんには気に食わなかったのか、その頃からは余り俺を褒めるような事はなかった。それどころか少しだけ軽蔑されていたような気もする。
デザイナーになりたいといい服ばかり作って、中学から女の子をとっかえひっかえ付き合って…おじちゃんが気に食わない気持ちもわかる気がする。
中学を受験して、有名大学にでも進んで父の会社を継ぐ、と言った生き方をしていたのならば直ぐにでも認めてくれたのかもしれない。
そんな生き方は俺には出来なかったと思うが……。
菫がお父さんの事はいい、とは言ってもそれじゃあ駄目なんだとどこかで気づいていた。
すっかり夜は更けていた。
菫にバレないようにスーツケースにウェディングドレスとそれに付属するパーツをしまい、リビングで珈琲を飲んでいたらそのままソファーでうたた寝をしてしまったらしい。