【完】Dimples 幼馴染のキミと僕

「実は中学生の時に篠崎リゾートの料亭に家族で行った事があるんです~ッ。
私昔から日本の文化や歴史に興味があって、篠崎リゾートの…社長の手掛けるお店はとても素敵でしたッ。
日本を愛しているんだなーって分かる装飾品の数々があって、日本の四季を感じられて…もちろん料理もすっごく美味しかったんですけど、店内の雰囲気はまるで昔の日本に旅行しに来てる気分になってすご~く素敵だなって。
菫さんもあんな素敵な社長に育てられたから素敵な人なんですよね~。ほんっと羨ましいなぁ~ッ…」

熱く語る彼女に…苦笑いしか出来なかった。

確かに父の造るお店は素敵だ。父自体も素敵な人に一見見えるかもしれない。けれどその結果がこの娘だ。

大真面目に父に従って生きてきた結果…こんな歳になってから家出をしてしまう、決して素敵だとは言えない娘。


会社で仕事をしていると「お疲れ様」とぽつりぽつり声が聴こえてきて、それを見送りながらパソコンの青白いディスクに目を通す。目が疲れたな、と思い時計に目をやったら既に時刻は19時を回っていた。

その場で’う~ん’と大きく伸びをして椅子をくるりと回すと、窓の外は薄暗くなっていた。鞄に入れっぱなしにしていた携帯に目を落とすと、メッセージを一件受信していた。


『今日は仕事早く終わった~(*'▽')まだ仕事?遅くなりそうだったら俺ご飯作るよ~』


< 203 / 321 >

この作品をシェア

pagetop