【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
そう、俺の夢は全て菫から始まったんだ。
ずっと一緒にいた彼女の為に服を造る楽しさを知った。
ピアノを始めたのだってそうだ。俺は菫と演奏するから、ピアノの楽しさを知ったのだ。
記憶をいくら辿ってみても、続く先にはいつも菫ばかりいる。
取材は滞りなく終わった。その帰り会社に寄ったら、広報担当の吉澤さんがやってきて出来上がったカタログを見せてくれた。
新しくS.A.Kから発売される大人路線のブランドのカタログだ。
「Dimples」というブランド名だった。これはとーちゃんがつけた名前だ。
ティーン向けの現在大ヒットしている洋服ブランド「Double tooth」もとーちゃんが名付け親だ。何を思ってその名をつけたかは知らないが、まぁとーちゃんなりの拘りつーもんがあるのだろう。
パラパラと雑誌を捲ると目を覆いたくなるショットが沢山あった。
吉澤さんは良い出来だ。と自信満々に言う。
…これは、恥ずかしい。 これが秋になったら大都会の街中で大画面に映し出され沢山の人に見られる。そう想像するだけで恥ずかしい。
カタログの中、お姫様のように美しくポーズを決める菫。やっぱり手足が長くて、洋服がよく映える。
美しい女だとは思っていたけれど、こうやって改めて紙面で映し出されるとその美しさを再確認せざる得ない。
そして何よりも…ふたりで絡み合って写っている写真。これは恥ずかしいな……。これ以上の事しちゃってるのに、写真として残るとまた別の恥ずかしさがある。