【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
「確かに我儘だと思います。
それでも俺には俺の夢がある。けれどそうやって生きる中で菫に苦労をかけるつもりは一切ありません」
「何故そんな事が言い切れるのだッ!夢などと生きて家族が幸せに出来るわけあるまい」
「菫は必ず幸せにします」
「認めない。君とは全く話にならんよ。悪いが帰ってくれないか?
君と話していると気分が悪くなる」
フッと視線を下に落とし、頭を抱える。そのおじちゃんの姿は本当に具合いが悪そうで、心配になるほどだ。
分かって欲しいのに、どうしたって分かり合えない。それでもおじちゃんに認めて貰えないのならば、菫と楽しく付き合っていく事は出来ないと思ったんだ。
ぺこりと頭を下げて、俺は鞄の中から今日出来たばかりのカタログを取り出した。
それを手に取りおじちゃんはハッと顔を上げた。横から覗き込むおばちゃんは口元を抑えて、少しだけ嬉しそうな顔をした。
「また君は…勝手な事を」
「確かに菫にモデルを頼んだのは俺ですが、それをやりたいと言ったのは菫です。
俺は彼女に何一つ無理強いをさせた事はありません…。菫が選んで自分が決めた事だったら…
おばちゃんの言う通り菫は少しくらい傷ついても構わないと思っている。それは自分が生きているって感じれる事だから。
でも小さな鳥かごに閉じこもって新しい世界も見ずに生きるのは…菫にとってきっと辛い事だと思ってます。傷を負う事より…」
再びぺこりと頭を下げてソファーから立ち上がった。