【完】Dimples 幼馴染のキミと僕

ティーカップに口をつけながら言った奈々さんの口調はとても優しいものだった。

彼と仕事を共にしている人が良い人たちばかりで良かった。それも全て潤の人徳にあるのでしょうけれど。

そんな風に周りから思われている潤自体が私には誇りだ。

「ほんと……。潤ってすごい人なの。小さい時からずっとそうなのよ?私は実は勉強も運動も人一倍努力をしなくっちゃ出来ないタイプだったんだけど、潤は私に出来ない事を飄々とこなす人だった。
何でも出来るの、今でもだけど。それなのにそんな自分をひけらかす事がなくって誰にでも優しくって…。
それに比べて私って本当にダメダメな人間なのよ…。意思が弱い癖して意地っ張りで昔からよく何すかしてんのよって周りから言われるし、きっと気遣いが苦手なのよね。
自分ながらうんざりしちゃうわ。潤や奈々さんみたいに夢も持ってないし…」


愚痴っぽくなっちゃって本当に自分の性格が嫌になる。

母が付けてくれたスミレという名に見劣りするわ。全然謙虚でもないし、誠実にも育たなかったものだわ。

そんな私を見て、奈々さんはクスクスと笑った。

「菫っちって実は素直だよね?」

「素直?私が?」

「うん。それに自分をちゃんと分かってないよ。
人一倍努力なんて簡単そうに見えて誰にでも出来る事なんかじゃないし、自分の駄目な所を自分で分析して反省出来るなんて難しいよ。
それに夢がないって言ったけど、夢がない菫っちにこんな素敵なお店作れるとは思えないけどな」


< 235 / 321 >

この作品をシェア

pagetop