【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
10.潤□自由の意味□
10.潤□自由の意味□
「帰ってくれ」
病院に駆けつけてぴしゃりと言われた一言がそれだ。
まぁ、当然っちゃー当然だ。この人が俺が来た時一瞬周りを見回し誰かを探したのには気づかない振りをしておくが…。
会いたかったに違いない。形がどうであれ菫を大切にしているのには間違いないのだから。
「あなた…せっかくいらしてくれたのにそんな言い方」
「そーだよー。ふつー来ないでしょ?娘は来てないつーのに娘の彼氏がわざわざ来てくれてさー。こんな夜に普通だったら来ないでしょ~?」
「彼氏と言うなッ!」
ふいっと顔を背けたおじちゃんは頭から布団を被ってしまった。
小さい頃は大人に見えた。いつもどんと構えていておおらかで、優し気な瞳で俺たちをただ見つめてくれた。
おじちゃん…小さくなったな。いや俺が大きくなったからそう見えるのか。そーいえばとーちゃんやかーちゃんだって小さい頃は大きく感じたけれど、大人になった途端に小さくなった。
そして大人というのは幼い頃考えてたよりも、しっかりとしていないということも自分が大人になった今なら分かる。
おじちゃんの帰れという言葉を無視してベッド脇にある丸椅子に腰をかける。
布団から顔を出して一瞬だけぎろりとこちらを睨んだけれど、それ以上は何も言わなかった。
産まれた時からの顔見知りってこういう時に便利だ。もしも俺と菫が幼馴染という立場でなく知り合って、この人に交際を反対されたらここまで大胆な行動は取れまい。
近くにいて育ってきたというのはやはり大きいのだ。